労働者派遣制度の見直しを検討してきた厚生労働省の有識者研究会は二十日、企業が一つの業務に派遣労働者を使用できる期間を最長三年に制限する現行ルールを撤廃し、労働組合の同意を条件に人を入れ替えれば派遣を使い続けられるようにすべきだとする報告書をまとめた。
労働者派遣法は、派遣先企業の正社員が仕事を奪われることがないように派遣を臨時的・一時的な仕事に限定してきたが、報告書はこの原則を大きく転換する内容だ。
企業にとっては、派遣が活用しやすくなり人件費の抑制につながるメリットがある。一方、労働者側からすると、正社員の仕事が派遣に置き換えられたり、非正規雇用が固定化したりする懸念があり、労働組合などから反発が出そうだ。法改正に向けた厚労省の審議会では、年末の取りまとめに向け労使の激しい議論が予想される。
現在は、無期限に派遣できるのは通訳やOA機器操作など、いわゆる「専門二十六業務」だけ。その他の一般業務は派遣先の正社員の雇用保護を理由に原則一年、最長三年に限定されている。
報告書は、専門性の判断が難しくなったとして専門業務の区分を廃止し、一般業務との一本化を提言。一人の派遣労働者が同じ職場で働ける期間を最長三年とした。その上で、派遣先の労使協議で労働組合や労働者代表から異論がなければ、企業は、別の派遣労働者に入れ替えることを前提に、三年ごとの更新ができるとした。
三年の期限を迎えた派遣労働者については、本人の希望に応じて派遣先への直接雇用申し入れや次の派遣先の提供などを人材派遣会社に求めた。
派遣会社との間で期間を限らずに雇用契約を結ぶ無期雇用の人(正社員)の派遣は「無期雇用派遣」と定義し、業務の種類を問わず無期限での派遣を認める。
◆規制緩和に逆戻り
厚生労働省の有識者研究会が二十日まとめた労働者派遣制度見直しの報告書は、派遣期間の延長など規制緩和を打ち出した。対象業務の拡大を中心に規制緩和を繰り返してきた派遣制度に対し、民主党政権は労働者保護のための規制強化を進めたが、報告書は以前の緩和路線への逆戻りを求めた。
「世界で一番企業が活躍しやすい国」を目指す安倍政権の方針に沿った内容だ。しかし派遣労働が広がれば、正社員の減少や不安定雇用の拡大などさまざまな副作用が懸念され、課題は多い。
一九八六年施行の労働者派遣法は、企業の使い勝手をよくするため、規制緩和が続いた。当初は専門性の高い十三業務に限って認められたが、九九年に建設や医療など一部を除き、適用対象業務を原則自由化。二〇〇四年には製造業務への派遣も解禁された。
しかし〇八年のリーマン・ショックで「派遣切り」が横行。派遣制度への批判が高まった。〇九年発足の民主党政権は労働者保護の姿勢を鮮明にし、一二年三月に日雇い派遣の原則禁止などを盛り込んだ改正労働者派遣法が成立した。
派遣という働き方は正社員と比べ雇用が不安定で、賃金も低いことが多い。制度見直しの議論は労使代表らが参加する労働政策審議会に移るが、労組側の懸念をどこまで解消できるかが焦点だ。(東京新聞 8月21日)
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※派遣法の改正に熱心?であった御手洗氏と安倍首相との先週の夏休みゴルフはこちら。
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派遣労働者として勤務する側もさせる側も経験した者として一言。。。
最近の限定社員や金銭解雇、派遣労働の緩和などは、正社員の解雇法制がキツイので、あの手この手で解雇が容易にできる労働形態を生み出そうとしているんだと思います。 事業を起こそうとしている人や現在経営をしている側にとって、解雇が事実上難しい労働者を抱えることは、金銭的にも精神的にもキツイです。 結婚する時よりも離婚するときのほうが何倍も苦労するというパターンと同じです(雇用を増やそうにも解雇トラブルが怖くて安眠できませんって。。。)。 時代的な流れで見れば、司法(判例)によって徐々に失われてきた解雇の自由を、形を変えて経営側が取り戻してきている流れなんだと思います。
ただ派遣って①給与面②将来への希望③職場の人間関係など、個人がいろいろ不安を抱えて働いています。もう少し経営側が、派遣や非正規労働者を容易に正社員に昇格してもいいと思える制度になればなあと思います。