厚生労働省の特別委員会は20日、政府のずさんな管理で持ち主がわからなくなった「消えた年金」5000万件超のうち、2112万件が未解明のまま残っていると発表した。政府は記録解明の集中作業期間を今年度で終える方針だが、記録解明に向けた姿勢が後退すれば、年金制度への不信が再燃する可能性がある。 特別委が発表した報告書案によると、2013年9月時点で解明できたのは2983万件。うち1738万件は記録の統合が終わり、年金保険料を納付している人が年金を適正に受給できるようになった。1245万件は持ち主の死亡などを確認でき、解明作業にメドがついた。
一方、解明できていない記録は、2112万件で全体の4割に及ぶ。このうち、海外に移住しているケースなど「手がかりがいまだつかめていない記録」が927万件。国から郵便などで確認を促したが、回答が無く持ち主が判明していない記録も863万件にのぼった。報告書は、解明作業が限界に近づいているとの認識を示唆した。
「消えた年金」が発覚した07年。安倍晋三首相(当時)は「最後の1人に至るまで年金を支払う」と言明したが、野党の批判が収まらず、退陣に追い込まれる伏線となった。09年に政権に就いた民主党も積極的に作業を進めたが、すべての解明は難しかった。
国は10~13年度を集中処理期間として位置付けてきた。これが終わるのを期に、厚労省の特別委員会は節目の報告書をとりまとめた。これまでに年金記録問題に費やした予算は約4013億円。記録訂正で年金額が回復した人は約269万人になった。年金の回復額は年間で946億円(1人当たり平均3.5万円)となる。
20日、特別委員会の磯村元史委員長は「決してこれで幕引きではない」と強調した。だが、政府の積極的な解明作業は13年度をもって終わる。13年度で旧社会保険庁がコンピューターで管理する年金記録と紙台帳の記録が一致しない約8億5千万件の突き合わせ作業がほぼ終わるためだ。
12年度に592億円あった年金記録問題にからむ予算は来年度150億円程度まで減る。今後は郵便やインターネットを通じて、国民に記録の確認を申し出るように促す作業に移る。ただ、もともとは国のミスで年金の受給権が揺らいだ問題だけに、今後も解明作業を続けるよう求める声が出る可能性がある。
年金記録問題は公的年金制度への信頼を大きく落とした。若者を中心に保険料を納付する人が減る傾向が続いており、国民年金の納付率は12年度は59%と4年連続で目標の60%を下回っている。
報告書では政治への注文は控え「評価は国民に委ねる」(磯村委員長)とした。年金制度への不信が再燃しないように、2000万件超の未解明記録への対応を今後も続ける必要がありそうだ。
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<宙に浮いた年金記録は今も発生>
そもそもこれだけ宙に浮いた年金記録が残っているということは、年金制度そのものに欠陥があります。
欠陥とは、年金制度が間違っているというよりも、「年金制度が複雑すぎてミスを誘発しやすい制度」ということです。 理論上はいくら立派であっても、実際に運用できるような制度でなければ、再度宙に浮いた年金記録が発生します(恐らく今年成人になった方にも、宙に浮いた年金記録が発生していると思う)。 昔、年金制度を作った方に今の現状をインタビューしたいですね。
<年金を調べるひと手間が面倒>
年金事務所に出かけたり、ねんきんネットで調べたりすれば、わかるとはいうものの、そのほんのちょっとした手間が面倒です(でも本当は調べてほしいです。額がバカになりませんよ!)。 また紙台帳の記録まで当たって調べるとなると、年金検索スキルも必要になります。
<エラーが発生しにくい簡易な制度へ>
今後は、地道に年金記録の統合作業をすすめつつ、やはり将来的にはミスがそもそも発生しにくい簡易な年金制度へ変わって欲しいと思います。 こんなに法改正の多い年金制度は、またエラーを発生しかねませんから。
以上、年金記録の調査員だった者のつぶやきでした(^^)。。。