12月

年金を増やす8つの方法

この動画・ブログでは、暮らしや経営に役立つ「社会保障制度」について、お伝えしております

今回は、「年金を増やす8つの方法」について、お話ししてまいりたいとおもいます。

年金増額は、若い方はもちろん、60歳以上でも可能ですので、参考となるものがありましたら、ぜひ実行に移してみましょう(令和元年度現在)。

 

 

60歳以降から年金額を増やす方法

①60歳以降も厚生年金に加入して働く

国民年金は20歳から60歳までの加入ですが、60歳以降70歳未満の間も、厚生年金に加入する働き方をすれば、年金額を増やすことができます。

働いて年金を増やすのが王道です(^^)

ところでよく聞かれる質問で、「国民年金は増えるんですか?」というのがありますが、国民年金加入は60歳までなので増えません。

しかし厚生年金保険料は、国民年金保険料分も含まれておりますので、厚生年金支給額のうち、経過的加算額(=差額加算)部分という名称で、「疑似国民年金」相当が厚生年金の中から給付されますので、ご安心ください。

 

②国民年金に任意加入(と付加保険料)

上記①で、厚生年金加入で働くと伝えましたが、厚生年金に加入できない場合は、どうしたら年金を増やすことができるでしょうか?

国民年金が満額(480月)まで加入していなければ、「国民年金の任意加入」ということで、65歳までは満額にする手段があります。

480月の満額になった場合、または480月に到達できなくても65歳になった場合は、そこまでの加入期間で打ち止めです。

この任意加入期間に、付加保険料400円を納付すると、さらに年金額を増額することができます。年金事務所で、任意加入手続の際、付加保険料についても質問してみましょう。

 

③65歳以降の年金額の繰下げ

65歳以降に厚生年金や国民年金(またはその両方)を繰下げますと、1ヶ月の繰下げにつき、0.7%ずつ年金額を増額することができます。

最長5年間(=70歳)まで繰下げることができ、その際は、42%増額することになります。

なお繰下請求による増額は、私は積極的にはオススメしておりません

と言いますのも、銀行の利息のように考えている方が多いのですが、繰下げによる増額はそうではありません。

一旦年金を捨てて、①まずは取り返す期間約12年必要 ②その後にようやく増額のメリットを享受 するものだからです。

さらに加給年金や振替加算などが付く方が繰下げしますと、その分も捨てることになりますがその捨てた分は戻ってきませんので、損益分岐点が約12年でなく、もっと先になります。

 

④年金記録を再確認する

すでに年金受給されているなら何歳でもOKです(80歳超でもOK)。

もし自分の年金記録を再確認して、年金記録が見つかると、年金額が増額されます。

現在でも2,000万件近くの年金記録が、宙に浮いたままで統合されていません。

少しでも疑問があれば、今一度年金記録を調べ直してもらいましょう。

 

 

 

60歳前から年金額を増やす方法

①免除期間を追納する

国民年金第1号被保険者であったときに、経済的な理由等で国民年金を免除してもらっていた方は、10年以内なら追納することによって、将来満額の年金額が受け取れます。

ただ、せっかく免除してもらったことで、半額ほど納付した状態になっておりますので、満額にせず放置するという考えはあります。

免除期間でなく、黙ったまま納めず「未納期間」となっている場合は、その期間の給付はゼロ0です。

未納期間は2年以内なら納付できますので、この方はぜひ納付して頂ければと思います。

 

②付加保険料を納める

国民年金保険料を納めている方は、1ヶ月400円追加して納付することで、多少、年金額を増やすことができます。増える額は、400円納付に対し年200円戻ってくるイメージで、2年で元が取り返せ3年目(=国民年金は65歳から支給なので68歳)から毎年得することとなります。

 

 

③国民年金基金に加入する

自営業者の方で国民年金保険料を納付している方は、「国民年金基金に加入」するという方法があります。

私も長年、年金相談に携わってきておりますが、何も対策をしていないと、自営業者さんの老後は結構大変です!

そこで国民年金基金(①終身型 または②確定型【5年・10年・15年】)に加入することで、老後の年金が手厚くなる上、節税対策にもなります。

下記に記載するiDeCoと違って、「終身型」があるのが魅力的ですので、自営業の方は、iDeCoと併用または国民年金基金単独で、できれば限度額一杯(81万6,000円)、掛けることをオススメいたします。

さらに、年金ではありませんが、「小規模企業共済」に加入して、自営業者の退職金を作る方法もオススメです。

 

 

④個人型確定拠出年金(iDeCo)に加入する

近年は、”先輩”である国民年金基金より、「iDeCo(イデコ)」が注目されております。

国民年金基金は自営業者など第1号被保険者しか加入できませんが、iDeCoは専業主婦や公務員も含め、基本的に60歳未満のすべての人が加入できます。

 

 

ドリナビ
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まずは、しっかり稼ぎましょう(^^)!
その上で、余裕資金を上記に投資して、老後資金を厚くしていきましょうね

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日本の年金は何位? 世界年金指数ランキング2019


 
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今回は、「世界年金指数ランキング2019」について、お伝えしてまいりたいと思います。

 

 

 

年金をあてにしない?

テレビやブログなどで、「年金なんか あてにするな!」という話や記事を目にされた方も多いと思います。

年金は信用ならないから、あてにせず貯蓄や資産運用をしていきましょう、というのもよく聞かれる話です。

確かに、年金を勉強すればするほど、「世代間格差がヒドイ!」「こっそり目減りしてズルイ!」「生活保護とのバランスが悪い!」「年金制度が難しすぎ!」など、マイナスな側面を知ることとなります。

年金をあてにしないと決心することにより、資産運用へのモチベーションも上がるかもしれません。

とはいえ年金は、老齢だけでなく障害年金や遺族年金も兼ね備えた、将来へのとってもありがたい保険なので、免除などを利用しながらでいいですから、極力「未納」は避けてくださいね。

ところで、年金に対する不安は、日本だけではないようです。

 

 

 

世界年金指数ランキング2019

2019年10月、アメリカのコンサルティング会社「マーサー」が、 「グローバル年金指数ランキング2019」を発表しました。

これは、マーサー社の独自ランキングで、各国の制度の総合指数は、「十分性 (Adequacy)」、「持続性 (Sustainability)」、「健全性 (Integrity)」に大別される40以上の項目から構成され、この3つの項目指数を加重平均して算出されております。

十分性 年金給付をはじめとした老後所得の手厚さを示す指標。給付水準(所得代替率)のほか、家計貯蓄率、私的年金(企業年金・個人年金)への税制優遇措置、持ち家率などが評価されます。日本は、「私的年金への税制優遇措置」などの項目で高評価を得ているものの、「所得代替率の低さ」「家計貯蓄率の低さ」そして「私的年金の給付が一時金主体であること」が評価を落とす要因となっています。
持続性 年金給付が継続的にもらえるかどうかを示す指標。私的年金の適用対象範囲、年金資産の対GDP比率、支給開始年齢と平均余命との差、労働力人口比率、政府債務比率、経済成長率などが評価されます。
健全性 民間の私的年金が健全に運営されるための規制、ガバナンス、情報開示等について評価する項目であり、公的年金は対象とされていません。日本は、健全性の評価は60.8と3つの指標の中では最も高い評価ですが、「資産運用に係る各種方針の整備状況」や「加入者への情報開示」についての評価は、他国と比べ見劣りします。

 

 

 

総合ランキング(2019)では、日本は37ヶ国中31位で、先進国としては最下位です。

順位を特に押し下げているのは、「持続性」です。

つまり、「現状の年金制度がこのまま持続するのかは不透明だ」、という風に判断されております。

現状でも相当難解な年金制度ですが、制度維持のため、数々の法改正が行われることでしょう

年金不信を少しでも解消するためには、政治家の方々には、支給開始年齢の引上げも含めて、早くビジョンを提示してほしいと思っております。

ドリナビ
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日本の年金制度が無くなることはないでしょうが、①支給開始年齢引上げや②支給水準の減少は覚悟しないといけません。 公的年金以外の収入手段を考えておきましょう!
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残業時間ダイエットをする方法

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今回は、「残業時間ダイエットをする方法」について、お伝えしたいと思います。

 

 

 

残業時間ダイエットとは

「残業時間ダイエット」とは、働き方改革の1つ、時間外労働の上限規制のことを指しております。

これまで日本は、「残業」に関しては、

①残業時間制限も

②残業代未払いも

実にあいまい(寛容?)な国でした

 

それが働き方改革によって、一部の業種を除き、大企業には2019から4月から、中小企業には2020年4月から「残業時間の上限規制」が行われることとなりました。

これまでと違って、残業時間の上限が法律上明記されたことによって、結果にコミット」する必要があり、ダイエットに失敗した場合は、「6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金」が科される恐れがあります。

すでに多くの方がご存じかとは思いますが、改めまして残業時間の上限規制の内容をお伝えしますと・・・

<残業上限規制イメージ図>

<中小企業の定義>

<残業規制の一部猶予>


これまでも残業上限規制は2段階で、行政指導レベルでは存在しました。

しかし今回の働き方改革で、同じく2段階ですが、法律上でしっかりと決められました。

原則:月45時間・年360時間まで

 

 例外:臨時的な特別の事情があって労使合意がある場合(=特別条項)は、原則を超えて働かせることができるが、その際は下記を守ること
①時間外労働が月45時間を超えることができるのは、年6ヶ月が限度年間720時間以内③時間外労働と休日労働の合計が、月100時間未満

④時間外労働と休日労働の合計が、「2・3・4・5・6ヶ月平均」が全て月80時間以内

 

 

 

 

 

サッサと「残業時間ダイエット」を行うべき理由

さて、残業時間の”総量規制”については分かったけど、現在の経営者の方は、

俺たちの若い頃は、もっと残業していた!

という意識で、なかなか「残業時間のダイエット」に乗り気でないかもしれません。

というわけで、私が「マインドリセット」へのお手伝いをしていきたいとおもいます(^^)。

 

そもそも100時間、80時間って、役人が考えた机上の数字だろ?

:いいえ、そうではありません。
科学的根拠(エビデンス)によるものです。
近年の医学研究等を踏まえ、平成13年12月12日付け基発第1063号「脳血管疾患 及び虚血性心疾患等(負傷に起因するものを除く。)の認定基準により、脳・心臓疾患の労災認定基準を改正することとなりました。
脳・心臓疾患の発症に影響を及ぼす業務による明らかな過重負荷として、これまで発症前1週間以内を中心とする発症に近接した時期における負荷を重視してきたところを、長期間にわたる疲労の蓄積についても業務による明らかな過重負荷として考慮することとしました。
この新認定基準の考え方の基礎となった医学的検討結果によると、長期間にわたる長時間労働やそれによる睡眠不足に由来する疲労の蓄積が血圧の上昇などを生じさせ、その結果、血管病変等をその自然経過を超えて著しく増悪させるとの観点から、疲労の蓄積をもたらす最も重要な要因と考えられる労働時間の評価の目安が次のとおり示されました。

すでに科学的根拠でこれ以上働いたら健康被害があるとしているわけですから、たとえ従業員側が「生活のため残業したい!」と言っていたことを理由として、良かれと思って働かせていたとしても、過労で脳血管や健康被害が出ることになれば、経営者側の責任となります。

 

 

Q:長時間労働させていたほうが、会社は儲かるだろ?

A:いいえ、むしろ事態は徐々に悪化しております。

まず、そもそも長時間労働は、「サービス残業」をさせること前提で考えてはいませんか? 

法改正により60時間超には、5割増の残業手当の支払義務が発生してきます。

 

長時間労働でようやく稼ぐというクセが治らないと、いつまでたっても「効率よく稼ぐ考えにつながらない」「毎日疲労しているので、新しいアイデアや事業展開に頭が回らない」ということにもなります。

そもそもどんなに長時間労働で生産性を上げても、東南アジア諸国の労働単価には負けてしまいますので、短い時間で稼ぐ手段を早く見つけないと、どんどんジリ貧になっていきます。

 

Q:長時間労働をさせないために、人を採用したいが、人が集まらない

A:これは負の連鎖を断ち切るしかありません。「人を採用してから労働時間を短くしよう」では、なかなか人は集まらないことでしょう。

ではどうしたら良いでしょうか?

例えば自社商品を買ってもらうとき、まずは魅力を発信しないと集客できません。

これと同様にまずは、自社の魅力を改めて見つめ直し、求人媒体に魅力をしっかり発信(アピール)していきましょう

そして、実際に集客(=求職者)出来た時に、逃げられないためにも同時並行で、職場環境の整備も進めていきましょう。

そのために活用できるのが助成金です!

助成金とは、単に「お金が支給される」というだけでなく、「どうやったら職場環境整備ができるのか?」の模範解答が示されてもいるのです。

ドリナビ
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働き方改革を進めて、今後も「ご飯が食べていける」会社作りをしていきましょう!

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賞与明細書の見方


 
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今回は、「賞与明細書の見方」について、お伝えしてまいりたいと思います。

※ボーナスが494,500円と仮定して、お話ししていきます

 

 

 

賞与から控除されるもの

夏・冬(場合により春も)に支給されます、賞与明細書をご覧になりますと、大きく3つのもの(「税」「雇用保険」「社会保険」)が控除されているかと思います。

この3点は毎月の給与と同じですが、控除方法には毎月の給与と相違点があります。

 

雇用保険の控除

賞与に保険料率を掛けた金額が控除されているハズです。

494,500×0.3%=1,483.5(50銭以下切捨、50銭超切上)

⇒1,483円

 

 

 

 

 

社会保険料(健保・厚年)の控除

社会保険料の控除は、雇用保険の控除とは、やり方が違います。

①まず賞与から1,000円未満の端数を切り捨てます。

494,500円⇒494,000円(「標準賞与」といいます)

 

②次に、保険料率を掛けます。毎月の給与の場合と違って、「等級表」は使わず、ダイレクトに保険料率を掛けます。

・健康保険料(介護保険なし。愛知県。令和元年度)

494,000円×9.90%÷2(本人負担分)=24,453円(50銭以下切捨、50銭超切上)

・厚生年金保険料(愛知県。令和元年度)

494,000円×18.3%÷2(本人負担分)=45,201(50銭以下切捨、50銭超切上)

 

 

 

 

所得税の控除

所得税の計算は、「賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表」に当てはめて、計算します。

 

①【賞与に対する税率の確定】

(1)この税率は今回支払われた賞与額で決まるのではなく、
前月の月次給与から社会保険料控除した残りの給与金額
で決まります。
※今回はこの金額が282,000円以上338,000円未満だったと仮定します。

 

(2)さらに従業員から提出済である「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」に記載されている扶養親族の数を確認します。

※今回は扶養者が1人として計算してみます。

この2つが交わるところが税率となります

②次に賞与から雇用保険料や社会保険料を控除して課税賞与額を求めます。

494,500円-(1,483円+24,453円+45,201円)=423,363円(=社会保険料控除後の賞与金額)

③最後に税率を掛けて、所得税額を求めます。
423,363円×6.126%=28,935.2(円未満切捨て)

⇒28,935円

 

 

 

最終的な賞与支給額

494,500(賞与)-1,483(雇用)-24,453(健保)-45,201(厚年)-28,935(所得税)
394,428円(振込額)

 

 

 

 

届出が必要なもの

会社は従業員に、無事賞与を支給し終わっても、まだホッとしてはいけません(^^)

 

会社は賞与支給後5日以内に、「賞与支払届」および「総括表」を年金事務所へ提出する必要があります。

私は以前、年金記録確認第三者委員会の専門調査員として活動しておりましたが、大企業・中小企業問わず、この賞与の届出を行っていない会社が散見されておりました。

平成15年4月から、「総報酬制の導入」によって、賞与にも将来の年金額に反映することとしました。

よって、会社が届出をしていないと、従業員の将来の年金額が少なく影響してきますので、忘れずに届出をしてくださいね

 

 

 

退職時の賞与について

Q:ボーナスを支給した月に退職した場合は?

A:12月の賞与を受取ったが、12/25に退職したなど、賞与をもらった月の末日まで在籍せず、途中で退職した場合は、社会保険料の控除はされません。

もし末日まで在籍しなかったのに、保険料控除されていた場合は、会社からお金を返してもらいましょう。

 

 

Q:ボーナス支給日当日に在籍していないと、「賞与支給無し」といわれたが、有効か?

A:就業規則に記載されており、周知もされておれば、当該規定は有効なものとなります(大和銀行事件、最高裁第2小法廷S57.10.7)。

賞与は将来的な勤労への期待等も勘案して支給されるものであると考えられるからです。

なお、就業規則に規定が無い場合は、「支給在籍要件」は、個別の労働契約の内容とならず(労働契約法7条)、会社は主張ができません。

また支給日以降、数日で退職を予定する社員に賞与の一定額を減額する取扱い(「減額支給制度」)も可能ではありますが、その際は、減額幅は1~2割程度が望ましいです(ベネッセコーポレーション事件東京地裁H8.6.28)。

 

 

 

Q:賞与規定はどのように作成したらよいでしょうか?

A:

①「支給日に在籍をしている者」の文言挿入(=支給対象者の明記)

②会社の業績によっては支給しない場合があるの文言挿入(=文言が無いと必ず支給)

③正規労働者の非正規労働者の不合理な待遇を是正する「同一労働同一賃金のガイドライン」に従い、待遇格差があれば説明できるようにしておく。

 

 

ドリナビ
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「賞与支払届」の提出忘れが多いので、会社は賞与を支払ったらすぐに提出してくださいね!

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退職時の労働者の権利とは?

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今回は、「退職時の労働者の権利とは?」について、お話しして参りたいと思います。

 

 

 

労働トラブルを防ぐには

社会保険労務士として労働相談などを担当しておりますと、会社側だったり労働者側だったり、色々な立場の方からご相談を受けます。

トラブル化した場合、完全に一方が悪いというケースは案外少ないんですよね。

双方の言いたいこと、よ~く分かるんですよ。

 

労働トラブルの一般的なイメージは、

会社側が「悪代官」で、労働者側が「善良な市民」

で、水戸黄門のように、悪代官をやっつける!みたいに思っている方も多いかと思います。

しかし実際のところは、本当にケースバイケースなのです。

それでも労働トラブルの多くのケースは、実際に争えば会社側は、負けてしまいます。

 

それは、交通事故で例えるとよく分かるんですよね。

自動車側に過失が無く、突然歩行者が赤信号で飛び出してケガをした場合、いくら歩行者が悪いといっても、前方不注意ということで、何らかのペナルティを食らいますよね。

それと同じで、会社側に過失が無かったとしても、弱い立場(そうとも限らないが・・・)である労働者側は、保護されるべきだという考えが根底にあるからです。

実際の争いの場になると・・・

労働者側の過失はそっちのけで、まず会社側の「アラ探し」を行い、アラが出た時点で、

「さあ、会社さん折れなさいよ」

といった感じで、早期和解をすすめるケースも多いです。

 

人のいい小規模経営者ほど、「モンスター社員」に右往左往するケースが散見されますので、アラを無くすためにも、社会保険労務士による「職場診断」をオススメしたいと思います

 

 

 

 

退職時の労働者の権利とは?

ところで今現在、気の優しい社員さんで、中には上司や会社側から、「いじり」「パワハラ」「過重労働」を強いられている方がいらっしゃるかもしれません。

もしかしたら、ご覧のあなたかも。。。

そんな気の優しいあなたが「退職したい!」と思ったとき、どんな権利があり、どのように申し出ればよいのでしょうか?

気の優しい性格を変える必要はありません。

社員として持っている権利を知って、防衛しましょう。

 

 

 

退職する労働者の権利①(退職時期)

気の優しい社員であるあなたは、なかなか上司に言い出せないことでしょう。

中には怖い上司に怯えている方もいるかもしれません。

昨今、「退職代行」といった業者を活用して、退職される方も増えておりますが、極力お金を使わず、自力で行いたいとお考えの方もいらっしゃるかと思います。法律上どのような決まりになっているかお話ししたいと思います

まず従業員には、退職する権利を保障するものとして、憲法で職業選択の自由が規定されております(憲法22条1項)。辞めたいというのを会社が無理やり引き留めることはできません

そのうえで、従業員側からの退職の申出による雇用契約の終了については、民法により規定されております(民法627条)。
※これまで完全月給制の場合、月の前半に伝えるか後半に伝えるかによって、退職時期が変わりましたが、改正後はシンプルに2週間前です。

 

 

Q:就業規則には1ヶ月前までと記載されているが

就業規則に1ヶ月前と記載することは違法ではないですが、あくまで会社としての要望です。

2週間前に退職してはいけないことではないです。

とはいえ、引き継ぎ等もありますし、余計な紛争を増やさないためにも、極力、就業規則に沿って1ヶ月前には伝えましょう。

さらに業界によっては(例えばアナウンサーなど)、6ヶ月以上前に伝えてほしいとなっていれば、今後のことも考慮して会社の規定に従う方がよろしいでしょう。

法律の2週間とは、あくまでギリギリのラインを示しているだけで、「2週間前ピッタリの請求が正解」という意味ではないからです。

 

 

 

Q:退職の伝達方法

退職の意思表示は、口頭でも成立します。

しかしながら、「離職票作成に必要」「今後のトラブル予防」のため、書面で退職届を提出しましょう。

ここで、「会社から強く引き留められている」「上司が怖くて怯えている」などにより、直接書面で提出するのが難しいという方もいらっしゃるかもしれません。

そんなときは、下記のような退職届を送付するという方法があります。

ただし配達した証明をするためには、「配達証明郵便」で、さらに配達した証明だけでなく内容まで証明するには、内容証明用紙(文具店で700円位で3枚複写の用紙が購入できます)で記入し、郵便局で「内容証明郵便」で送るという方法があります。

直接上司に退職届を提出できない場合に一方的に通知する際のひな形

 

 

 

 

 

退職する労働者の権利②(有給休暇の消化)

年次有給休暇が残っている場合、少しでも消化して退職したいと思っている方もいらっしゃるかもしれません。

その際は、「消化」又は「買い取り」という方法が考えられます。

 

 

退職時の年次有給休暇の処理

法律上で与えられた有給休暇は、労働者の権利です。会社側は繁忙期などは有給休暇の取得時季を変更することもできますが、退職日よりも後の日に変更することはできません。

よって、退職日に有給休暇が残っていた場合は、経営状態などを退職希望者の心情に訴えて有給休暇消化の一部又は全部を放棄してもらう以外は、①有給休暇を取得させる、あるいは、②引き継ぎに出てもらう代わりに買い取りに応じる必要があります

労働者の有給残日数が多いということは、会社にとってかなりリスクがある状態ということなんですね。

 

 

 

退職する労働者の権利③(退職時の証明)

次の転職に必要などの理由で、退職後に「退職証明書」の交付を請求することも可能です(労基法22条第1項)。

ただし交付は、①本人が交付を希望し かつ②希望した項目のみ交付 です。

 

 

 

 

 

退職する労働者の権利④(労働紛争解決)

未払残業代請求

サービス残業の記録等を残していた場合は、退職時に未払残業代請求をすることも可能です。
請求する側は、資料を用意するなど大変ですが、請求を受理する会社側はもっと大変で、かなりダメージを食らいます。

 

悶々とせず、サッサと未来へ行動を移した方が良い場合もあります。

が、あまりにも未払残業代があり、今後の生活にも影響するようであれば、労働者として請求するのもアリだと思います。

 

いじめ・パワハラ・セクハラ

社内における「嫌がらせ」によって退職せざるを得なかった場合、損害賠償請求をするという方法もあります。

昔は労働紛争相談といえば、「解雇」「労働条件引下げ」でしたが、労働基準監督署に設置されております総合労働相談コーナーでの相談第1位は、「いじめ・嫌がらせ」です。

 

 

上記のような紛争は自分たち(会社内)で解決できないときは、まず誰かに相談することから始まります。

これは、労働基準監督署に設置されております「総合労働相談コーナー」をご利用なさると良いでしょう(無料)。

そこでは、労働に関する様々なお悩みを聞いてくれるだけでなく、その後の解決方法(「自主解決」「労働局等のあっせんによる解決」「労働審判」「裁判」「法テラス制度」)などのアドバイスも受けられます。

 

 

 

 最後に・・・

できることなら、労使とも「円満退社」を望みたいところですが、感情が伴いますから、なかなか難しい側面もあります。

そもそも円満退社とはどういう退職をいうのでしょうか? 

人によってその価値観はバラバラです。

「定年までつつがなく過ごすこと」「次の職場に役立つスキルが身に付けられること」「職場で大事に扱われること」「労働基準法どおりの扱いを受け退職すること」などなど。。。

退職時に労働者が持っている権利は、これまでお伝えしましたとおりですが、必ず法律通り権利行使しなければならないわけではなく、どこまで行使するかどうかは、あなた次第。。。

できれば退職時には惜しまれつつ、新天地でも活躍ができるよう、心より願っております。

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知らないと損する様々な「給付金」

このブログ・動画では、暮らしや経営に役立つ「社会保障」について、お伝えしております

今回は、「知らないと損する様々な「給付金」」について、お話しして参りたいとおもいます。

 

 

 

ライフステージごとに必要なお金

人が生まれてから亡くなるまでに、さまざまなお金が必要です。

出産するとき、進学するとき、事業を起こすとき、病気になったとき、老後を迎えたとき・・・などなどです。

個人的には、人生に必要な「お金に関する教育」は、高校や大学で学ぶ必要があるとは思いますが、現実にはあまり行われていないようです。

なにも、いきなり「投資教育を始めよう」なんてことは、いいません。

せめて、生きていくうえで場面ごとに必要になる「お金」について、学んでおきたいものです。

ちなみにそういった意味では、私が所持している「社会保険労務士」「ファイナンシャルプランナー(AFP)」という資格は、ものすごく役立っております。

 

 

 

国のお金サポートシステム=給付金

先ほど、ライフステージごとに様々なお金が必要だとお伝えしました。

でも生まれながら資産家でない限り、そういったお金を事前に準備するのは大変です。またお金を貯めこんでいては、人生楽しめないですし、経済も回らなくなります。

ある程度、生活や事業活動をする上での貯金は必要ですが、それ以上は、なかなか難しいものです。

なので国は、ライフステージごとに様々なお助け機能である「給付金システム」を設けております。

知らず知らずのうちに、ライフステージごとに必要になるお金を受ける権利を得ているのをご存じでしょうか?

私も長年、勉強しておりますが、

こんな給付金あるんだ

というのを今でも感じることがあります。

 

 

 

 

 

こんなにある「給付金」

さて日本の社会保障(=給付金)には、どんなものがあるのでしょうか?

「年金」「給付金」「補助金」「奨励金」など、様々な名称で国は支援をしております。

代表例を挙げてみましょう。

 

病気・ゲガ

①労災保険・・・業務上の病気やケガで、所得補償をする

②傷病手当金・・・業務上の病気やケガで、所得補償をする

③高額療養費・・・一定以上の医療費がかかった場合の負担限度額

④母子(父子)家庭への医療費助成・・・ひとり親世帯への補助

⑤医療費控除・・・一定以上の医療費がかかった場合の税金の補助

⑥障害年金・・・日常生活に不自由がある病気・障害になった場合の所得補償

 

 

 

高齢

①老齢年金・・・原則65歳以上に支給される所得補償

②介護保険・・・原則65歳以上から使える介護費用の補助

③介護休業給付・・・介護で会社を休む場合の所得補償

④遺族年金・・・配偶者な亡くなった際の所得補償

⑤埋葬料・・・亡くなった際の葬儀代補助

 

 

 

出産

①出産育児一時金・・・出産にかかる費用の補助

②出産手当金・・・勤労者が妊娠した場合の所得補償

③育児休業給付・・・出産後、職場復帰するまでの所得補償

④社会保険料免除・・・産前産後と育児休業中の社会保険料免除

⑤乳幼児医療費助成・・・乳幼児にかかる医療費の補助

⑥児童扶養手当・・・ひとり親家庭への所得補償

⑦児童手当・・・中学卒業までの子供への養育費用補助

⑧奨学金・・・日本学生支援機構による進学費用の給付・貸与

 

 

 

就労

①失業給付・・・仕事を失ったときの所得補償

②職業訓練・・・失業中のスキルアップと所得の補償

③教育訓練給付・・・勤務中のスキルアップ費用補填

④未払賃金立替制度・・・会社が倒産したときの所得補償

⑤生活保護・・・就労困難や生活苦による所得補償

 

会社

①助成金・・・従業員の採用や待遇改善等にかかる費用の補填

②補助金・・・創業や事業拡大にかかかる費用の補填

 

 

 

 

あなたに適合するものは何?

上記のとおり、メニューが沢山ありますので、生きていれば何らかの給付金のお世話になることでしょう。

自分に適合する給付金が判別できれば、あとは役所で聞いたり、ネットで調べたり、あるいは近所で詳しい方に聞くなりして、給付金受給に結び付けることができます。

しかし、一番最初の「何が適合するか?」を判別するのが大変です。

 

今のありのままの自分で、何が受給できるか知りたい!

 

やっぱりこの最初の「気付き」が、一番大事ですよね

将来AIが発達して、色々話しかけたら

「アナタハ・〇〇〇ヲ・ウケトレル・カノウセイガ・アリマス」

 

と言ってくれる時代が来るかもしれません。

 

が、そんな時代が来るまでは、詳しそうな方に、身の上相談がてら、給付金についてお尋ねいただくのもよろしいかなと思います

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