「生涯派遣の心配」と正社員という身分

「生涯派遣の心配」と正社員という身分

2014.11.10
今国会の焦点となっている労働者派遣法改正案に、派遣で働く人たちから「正社員への道が閉ざされる」と不安の声が上がっている。
派遣労働の期間制限を事実上撤廃し、同じ業務で継続して派遣を使えるようにする内容で、業務が派遣に固定化される恐れがあるからだ。政府は「正社員への転換を促すようにする」と説明するが、経済界の要望に沿った改正案には「企業の使い勝手がよくなるだけ」との批判も。
専門家は「正社員から派遣への置き換えが進む恐れがある」と指摘する。

「キャリアを重ねても、給料も待遇も同じまま」。20年以上派遣で情報入力の仕事をしている札幌市の女性(52)はため息をつく。現在の時給は900円ほどで、2008年のリーマン・ショック以降は交通費や燃料費も出なくなった。手取り月収は11万円前後だ。

市内の会社で正社員として働いていたが、月60時間を超える残業で体調を崩し、派遣で働き始めた。だが、いつ契約が打ち切られるかわからない。「不安です。本当は正社員がいい。
でも、派遣元は派遣先の言うなりで、待遇改善や正社員化を働きかけてくれたことはなかった」。

厚生労働省の12年度の調査では、派遣労働者の6割が「正社員として働きたい」と回答。
だが、同省の別の調査によると、派遣を受け入れている企業のうち、正社員への採用制度があるのは28%、過去1年間に実際に採用したのは5・8%にとどまる。

北海道ウイメンズ・ユニオンの大野朋子委員長は「期間制限の撤廃は、現状でも狭い正社員への道をさらに狭める」と指摘。
「撤廃がなぜ『正社員への転換を促す』ことになるのか」と憤る。※2014/11/9 どうしん電子版に全文掲載
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<生涯派遣のままになる可能性は確かにある・・・>
まず初めに、個人的感想なんですが、派遣や非正規雇用が労働者として「普通」であって、今の正社員が「例外」と思うと、気分が楽になるかと思っています。「正」と付くと『正しい、本来』とイメージするので、どうしても肩身が狭い思いをしますが、資本主義制度の中では「特権社員」です。(※名ばかり特権社員で過重労働するケースも多いんですけどね・・・)

ところで企業は、できるだけ労務費というコストを抑えて、経営しております。

なので、解雇や昇給の心配が少ない派遣労働者は、企業としてはずっと使っていきたいと思うのは自然のなりゆきです。

これは、イザ自分が人を雇って経営していこうと思ったときには、「正社員」という解雇が難しい現在の「身分」は、できるだけ少なくしておきたいと思うはずです。

残念ながら、おおっぴらに話すことではないけれど、派遣労働者は、「解雇や昇給というということを放棄して働いている、経営的に都合のよい労働者である」ということを、頭の片隅に認識しておく必要があります。資本主義社会である以上、どうしてもそういう部分は出てきます。

 

<「学生時代の教え」と「資本主義制度の掟」とのギャップ>

小中高大と、学生生活を送っているときには、「平等」「公平」「正義」といったことを教えられるのに、社会に出ると、資本主義制度の荒波に揉まれることになります。学生時代しっかりその教えを学んだ人だと、そのギャップに戸惑うことになります。

上記記事の状態に置かれている方々は、個人の能力不足とかヤル気が足りないとかより、「学生時代の教え」と「資本主義制度の掟」との違いに、頭が戸惑っているんだと思います。どこかで現状の仕組みから、一歩別のステージ(正社員や起業など)にチャレンジする思考も必要かなと思います。

「資本家」と「労働者」・・・一朝一夕では解決できない、近代より続く労務問題です。。。

社会保険労務士が、そんな労務問題の解決策の一例をご提案できればと思っています

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