【労働】ワタミ過労自殺で和解、その意義とは?

【労働】ワタミ過労自殺で和解、その意義とは?

2015.7.24
※2015/12/8 日本経済新聞
居酒屋チェーン「ワタミ」子会社の正社員だった森美菜さん(当時26)が2008年に過労自殺したのは会社側の責任だとして、遺族がワタミや創業者の渡辺美樹参院議員らに損害賠償約1億5千万円を求めた訴訟は8日、東京地裁(吉田徹裁判長)で和解が成立した。ワタミ側が責任を認め約1億3千万円を支払い、謝罪する。社員らの長時間労働防止策も盛り込んだ。
訴状によると、森さんは08年4月にワタミフードサービス(現ワタミ)に入社し、神奈川県内の店舗に配属された。休日もほとんど取れず、連日、午後から深夜や早朝にかけての長時間勤務を強いられ、同年6月に自殺した。残業は月140時間以上で、過重労働が原因で適応障害を発病したとして労災認定された。
森さんの遺族は13年、ワタミ側が安全配慮義務を怠ったのが自殺の原因として提訴。ワタミ側は当初、「法的責任はない」として争っていた
遺族や代理人弁護士によると、和解内容はワタミ側が自殺は過労が原因と法的責任を認め、損害賠償として約1億3300万円を支払う。
社員らの労働条件見直しにも言及。研修会などを労働時間と認定することとし、08年度以降にワタミに入社した社員に未払い賃金として一律約2万円、計約4500万円を支払う。残業時間の削減に努めることなども明記した。
同日の和解協議には渡辺氏が出席し、「会社の理念が独り歩きし、森さんを追い詰める結果になったことを悔いている」と謝罪したという。
父親の森豪さん(67)は「会社側に法的責任を認めさせる思いで闘ってきて、判決以上の結果が得られたと考えている」と述べた。母親の祐子さん(61)は「ワタミに就職することを何としてでも止めておくべきだったと今も後悔している」と涙をにじませた。
ワタミは同日、「原告側にご心労を与えたことを心からおわびする。現在、労働環境の改善に取り組んでおり、同様の事案の再発防止に努めている」とのコメントを出した。
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<日本の労働慣行を見直すこととなった、とっても大きな事件>
今回の件は、日本の雇用慣行に対する考え方が、変わりつつあることを象徴するものであったと思います。

この事件が起こる以前は、まだまだ長時間勤務に対して、日本は寛容的であったと思います。

しかし、「終身雇用制度の崩壊」「労働密度の高度化」「可処分所得が増えない」「ネット社会の進展」などにより、徐々に若い世代から、長時間労働(というよりサービス残業)への不満が膨らんできています。

正直なところ、バブル崩壊以前などは、このような長時間勤務でも、それほど問題視されなかったように思います。

でも、上記のような時代背景により、若い世代は長時間のサービス残業に対して、厳しい目を向けてきています。

労働法順守しないことのリスク」が、年を追うごとに大きくなっているのです。

 

ワタミ側は、「ブラック」と見られ、どんどん経営が悪化していきました。

そして今回ついに、法的責任だけでなく「過労死自殺初の懲罰的な賠償(一般的な慰謝料の倍の4000万円)」も「今後の労働環境の改善策」をも受けいれました。

判例として残さず、和解になりましたが、実質的には完全に「白旗」を上げることとなりました。

しかし過重労働問題は、ワタミ1社だけに限った話ではないのです。

あなたの会社や身の回りにも、もう起きていることかもしれません

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