エイズウイルス(HIV)に感染した看護師が、勤務先の病院で本人の同意なく感染情報が共有され、上司から休職を指示されたのは違法として、病院を経営する福岡県の医療法人に損害賠償を求めた訴訟で、違法と認めた二審判決が確定した。
最高裁第3小法廷(山崎敏充裁判長)が29日付で医療法人側の上告を退ける決定をした。
看護師は2011年8月、勤務先とは別の病院での検査で感染が判明。結果は勤務先に伝わり、看護部長らから仕事を休むよう指示され、同年11月に退職した。勤務先に約1000万円の賠償を求め提訴し、検査結果を伝えた病院との間では和解が成立した。
福岡地裁久留米支部は「HIV感染者に対する偏見や差別はまだあり、感染は他人に知られたくない情報だ。同意を得ないで診療目的以外の労務管理に利用することは許されない」として約115万円の賠償を命令。福岡高裁は「病院は勤務内容を変更して働くことも可能と説明している」として、賠償額を約61万円に減額した。
厚生労働省のガイドラインは、HIV感染は解雇の理由にならないと明記。雇用側は労働者の感染情報の秘密保持を徹底し、健康ならば他の人と同じ処遇で扱い、感染リスクの高い医療従事者でも基本的に変わらないとしている。
2016/3/31 時事通信
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血を扱う場面が多く、感染リスクの高い医療従事者。
それでも・・・
解雇無効はもちろん、休職指示をすることも違法となることが確定しました。
<参考:HIV感染自体を理由とする解雇は無効> まず初めに「HIV感染者=エイズ患者」ではなく、HIVに感染した時点では「HIV感染者」です。 HIVの感染により免疫が機能しなくなり発症して「エイズ患者」となります。 厚生労働省の「職場におけるエイズ問題に関するガイドライン」(平7.2.20 基発第75号、職発第97号。いわゆる「エイズ指針」)も、「HIVに感染していることそれ自体は解雇の理由とならない」としている上、HIV感染自体を理由とする解雇の可否が争われた判決(東京地判平成7.3.30 HIV感染者解雇事件)でも解雇は無効とされています。 |