男性より女性に手厚い遺族補償年金の規定が憲法に違反するかが争われた訴訟で、大阪地裁は25日、法の下の平等を定めた憲法14条に違反すると判断した。中垣内(なかがいと)健治裁判長は、共働き世帯が当たり前の今、専業主婦を想定して約50年前に設けられた男女格差の規定に合理性はないと指摘。地方公務員災害補償法(地公災法)の規定を根拠に堺市の元会社員(66)への遺族補償年金の不支給を決めた処分を取り消した。
遺族補償年金の男女格差を違憲とする司法判断は初めて。同じ規定は、民間労働者の遺族補償や厚生年金にもあり、判決は制度の見直しを促す内容となった。
判決によると、元会社員は1998年に堺市立中学教諭の妻(当時51歳)を亡くした。妻は職務上の心理的ストレスからうつ病を発症して自殺し、地方公務員災害補償基金(東京)に公務災害と認められ、元会社員は遺族補償給付制度に基づく年金を申請した。
しかし、基金は、妻の死亡時に元会社員が51歳だったことを理由に、年金の不支給を決めた。地公災法32条の規定などで、夫を亡くした女性は年齢に関係なく年金をもらえるが、妻を亡くした男性の場合は(1)妻の死亡時に55歳以上(2)受給開始は60歳以上--という条件が付いているからだ。
女性は、夫の過去3カ月の平均給与の153~245日分の年金が毎年、生涯にわたり支給される。一方、妻死亡時に54歳以下の男性は平均給与の1000日分の一時金の支給となる。
判決はまず、この男女格差の規定について、終身雇用や年功序列で正社員の男性を処遇し、妻の多くが専業主婦だった67年に制定されたと言及した。そして、女性が就業するのが相当困難な時代の区別であり、「立法時には一定の合理性があった」とした。
しかし、こうした規定は「憲法に照らし不断に検討、吟味されなければならない」と指摘。共働き世帯が専業主婦世帯を上回り、女性より男性の完全失業率が高くなった他、母子家庭の8割以上が就業するなど、社会情勢が大きく変化しており、「性別のみで受給権の有無を分ける合理的な根拠はない」と認定した。
さらに、母子家庭を対象にした児童扶養手当が2010年8月から父子家庭にも支給されるなど、男女の差を解消する国の動きも挙げた。
そして、「男性と比べて依然不利な状況だが、女性の社会進出が進み、共働き世帯が一般的な家庭モデルとなった今日、地公災法32条の規定は不合理な差別的扱いとして、違憲・無効と言わざるを得ない」と結論付けた。
国の社会保障制度の男女格差を巡っては、顔に傷を負った場合の障害補償給付(労災保険)が男性より女性に手厚いことが差別に当たるかが争われた訴訟で、京都地裁が10年5月に違憲判決を出した。国は11年2月、労働者災害補償保険法施行規則を改正し、この格差を見直した。※2013/11/25 毎日新聞
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最高裁ではなく一応、地裁での判断ですが、今後の社会保障制度の在り方について問われる判決です。最近の司法は「法の下の平等」を掲げて、立法府を揺さぶっているようにも感じられます(選挙制度・親族法・外国籍法・社会保障制度・労働法制度・年金制度・・・)。
<これまでの社会保障制度には男女格差がいっぱい!>
元々、日本の社会保障制度は、男女によって支給要件や支給額に違いがあることは、「性差による経済格差を縮める意味でむしろ善である」という考えで作られています。
だから、上記記事のとおり、昔は顔に同じ傷を負っても、男女で給付額は違っていました。
<「区別」→「差別」への変遷>
①母子家庭、寡婦(=夫と死別または離別し、再婚していない女性のこと。未亡人。)になると生活がとたんに困窮。
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②性による給付面の男女区別をし、経済的な格差を実質的に縮める役割をはたす。
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③情報化社会やサービス業の広がりにより、女性も仕事をする機会が増える。また男女雇用機会均等法など法律による整備もされ、男女の区別はいけない傾向が強まる。
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④男の圧倒的な経済的メリットは減少傾向。また社会保障制度の男女の「区別」は「差別」という意識が徐々に強まってくる。 ←今ココ
<社会保障の恩恵を受ける対象は?>
男女に関係なく、社会保障制度とは、現に困っている方へのサポートをするためのものです。そういった意味では、男女で区別するものではなく、給付条件はいっそ同一にして、所得水準で支給停止する方法もありかもしれません。でもこれまで積み上げられてきた制度を、色々変えないといけませんね。。。
最近の司法の流れは、昔は「区別」だったものを「差別」として、判断してきているようです。今後の社会保障制度は、より男女差なくフラットな制度になってくるのではないかと思います。