退職時の労働者の権利とは?

退職時の労働者の権利とは?

このブログ・動画では、暮らしや経営に役立つ「社会保障の仕組み」についてお伝えしております

今回は、「退職時の労働者の権利とは?」について、お話しして参りたいと思います。

 

 

 

労働トラブルを防ぐには

社会保険労務士として労働相談などを担当しておりますと、会社側だったり労働者側だったり、色々な立場の方からご相談を受けます。

トラブル化した場合、完全に一方が悪いというケースは案外少ないんですよね。

双方の言いたいこと、よ~く分かるんですよ。

 

労働トラブルの一般的なイメージは、

会社側が「悪代官」で、労働者側が「善良な市民」

で、水戸黄門のように、悪代官をやっつける!みたいに思っている方も多いかと思います。

しかし実際のところは、本当にケースバイケースなのです。

それでも労働トラブルの多くのケースは、実際に争えば会社側は、負けてしまいます。

 

それは、交通事故で例えるとよく分かるんですよね。

自動車側に過失が無く、突然歩行者が赤信号で飛び出してケガをした場合、いくら歩行者が悪いといっても、前方不注意ということで、何らかのペナルティを食らいますよね。

それと同じで、会社側に過失が無かったとしても、弱い立場(そうとも限らないが・・・)である労働者側は、保護されるべきだという考えが根底にあるからです。

実際の争いの場になると・・・

労働者側の過失はそっちのけで、まず会社側の「アラ探し」を行い、アラが出た時点で、

「さあ、会社さん折れなさいよ」

といった感じで、早期和解をすすめるケースも多いです。

 

人のいい小規模経営者ほど、「モンスター社員」に右往左往するケースが散見されますので、アラを無くすためにも、社会保険労務士による「職場診断」をオススメしたいと思います

 

 

 

 

退職時の労働者の権利とは?

ところで今現在、気の優しい社員さんで、中には上司や会社側から、「いじり」「パワハラ」「過重労働」を強いられている方がいらっしゃるかもしれません。

もしかしたら、ご覧のあなたかも。。。

そんな気の優しいあなたが「退職したい!」と思ったとき、どんな権利があり、どのように申し出ればよいのでしょうか?

気の優しい性格を変える必要はありません。

社員として持っている権利を知って、防衛しましょう。

 

 

 

退職する労働者の権利①(退職時期)

気の優しい社員であるあなたは、なかなか上司に言い出せないことでしょう。

中には怖い上司に怯えている方もいるかもしれません。

昨今、「退職代行」といった業者を活用して、退職される方も増えておりますが、極力お金を使わず、自力で行いたいとお考えの方もいらっしゃるかと思います。法律上どのような決まりになっているかお話ししたいと思います

まず従業員には、退職する権利を保障するものとして、憲法で職業選択の自由が規定されております(憲法22条1項)。辞めたいというのを会社が無理やり引き留めることはできません

そのうえで、従業員側からの退職の申出による雇用契約の終了については、民法により規定されております(民法627条)。
※これまで完全月給制の場合、月の前半に伝えるか後半に伝えるかによって、退職時期が変わりましたが、改正後はシンプルに2週間前です。

 

 

Q:就業規則には1ヶ月前までと記載されているが

就業規則に1ヶ月前と記載することは違法ではないですが、あくまで会社としての要望です。

2週間前に退職してはいけないことではないです。

とはいえ、引き継ぎ等もありますし、余計な紛争を増やさないためにも、極力、就業規則に沿って1ヶ月前には伝えましょう。

さらに業界によっては(例えばアナウンサーなど)、6ヶ月以上前に伝えてほしいとなっていれば、今後のことも考慮して会社の規定に従う方がよろしいでしょう。

法律の2週間とは、あくまでギリギリのラインを示しているだけで、「2週間前ピッタリの請求が正解」という意味ではないからです。

 

 

 

Q:退職の伝達方法

退職の意思表示は、口頭でも成立します。

しかしながら、「離職票作成に必要」「今後のトラブル予防」のため、書面で退職届を提出しましょう。

ここで、「会社から強く引き留められている」「上司が怖くて怯えている」などにより、直接書面で提出するのが難しいという方もいらっしゃるかもしれません。

そんなときは、下記のような退職届を送付するという方法があります。

ただし配達した証明をするためには、「配達証明郵便」で、さらに配達した証明だけでなく内容まで証明するには、内容証明用紙(文具店で700円位で3枚複写の用紙が購入できます)で記入し、郵便局で「内容証明郵便」で送るという方法があります。

直接上司に退職届を提出できない場合に一方的に通知する際のひな形

 

 

 

 

 

退職する労働者の権利②(有給休暇の消化)

年次有給休暇が残っている場合、少しでも消化して退職したいと思っている方もいらっしゃるかもしれません。

その際は、「消化」又は「買い取り」という方法が考えられます。

 

 

退職時の年次有給休暇の処理

法律上で与えられた有給休暇は、労働者の権利です。会社側は繁忙期などは有給休暇の取得時季を変更することもできますが、退職日よりも後の日に変更することはできません。

よって、退職日に有給休暇が残っていた場合は、経営状態などを退職希望者の心情に訴えて有給休暇消化の一部又は全部を放棄してもらう以外は、①有給休暇を取得させる、あるいは、②引き継ぎに出てもらう代わりに買い取りに応じる必要があります

労働者の有給残日数が多いということは、会社にとってかなりリスクがある状態ということなんですね。

 

 

 

退職する労働者の権利③(退職時の証明)

次の転職に必要などの理由で、退職後に「退職証明書」の交付を請求することも可能です(労基法22条第1項)。

ただし交付は、①本人が交付を希望し かつ②希望した項目のみ交付 です。

 

 

 

 

 

退職する労働者の権利④(労働紛争解決)

未払残業代請求

サービス残業の記録等を残していた場合は、退職時に未払残業代請求をすることも可能です。
請求する側は、資料を用意するなど大変ですが、請求を受理する会社側はもっと大変で、かなりダメージを食らいます。

 

悶々とせず、サッサと未来へ行動を移した方が良い場合もあります。

が、あまりにも未払残業代があり、今後の生活にも影響するようであれば、労働者として請求するのもアリだと思います。

 

いじめ・パワハラ・セクハラ

社内における「嫌がらせ」によって退職せざるを得なかった場合、損害賠償請求をするという方法もあります。

昔は労働紛争相談といえば、「解雇」「労働条件引下げ」でしたが、労働基準監督署に設置されております総合労働相談コーナーでの相談第1位は、「いじめ・嫌がらせ」です。

 

 

上記のような紛争は自分たち(会社内)で解決できないときは、まず誰かに相談することから始まります。

これは、労働基準監督署に設置されております「総合労働相談コーナー」をご利用なさると良いでしょう(無料)。

そこでは、労働に関する様々なお悩みを聞いてくれるだけでなく、その後の解決方法(「自主解決」「労働局等のあっせんによる解決」「労働審判」「裁判」「法テラス制度」)などのアドバイスも受けられます。

 

 

 

 最後に・・・

できることなら、労使とも「円満退社」を望みたいところですが、感情が伴いますから、なかなか難しい側面もあります。

そもそも円満退社とはどういう退職をいうのでしょうか? 

人によってその価値観はバラバラです。

「定年までつつがなく過ごすこと」「次の職場に役立つスキルが身に付けられること」「職場で大事に扱われること」「労働基準法どおりの扱いを受け退職すること」などなど。。。

退職時に労働者が持っている権利は、これまでお伝えしましたとおりですが、必ず法律通り権利行使しなければならないわけではなく、どこまで行使するかどうかは、あなた次第。。。

できれば退職時には惜しまれつつ、新天地でも活躍ができるよう、心より願っております。

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