厚生労働省は公的年金の給付水準を物価動向にかかわらず毎年度抑制する仕組みを2015年度に導入する方針だ。いまの制度では物価の上昇率が低い場合は給付を十分抑制できないが、少子高齢化の進展に合わせて必ず給付を抑える。すでに年金を受給している高齢者にも負担を分かち合ってもらい、年金制度の持続性を高める。
少子高齢化にあわせて毎年の年金給付額を抑えるマクロ経済スライドと呼ぶ制度を見直す。15年の通常国会への関連法案提出を目指す。
現在のルールではデフレ下では年金を削減できず、物価の伸びが低い場合も、前年度の支給水準を割り込む水準まで減らすことはできない。年金は物価水準に連動して毎年度の給付水準が調整されるが、物価下落以外の理由で名目ベースの年金額が前年度より目減りすることを避けているためだ。
今後は物価や賃金の動向に関係なく、名目で減額になる場合でも毎年度0.9%分を削減する方針だ。この削減率は平均余命の伸びや現役世代の加入者の減少率からはじくので、将来さらに拡大する可能性もある。
改革後は、例えば物価の伸びが0.5%にとどまった場合、翌年度の年金は物価上昇率から削減率0.9%を差し引き、前年度より0.4%少ない額を支給する。物価がマイナス0.2%のデフレ状況なら、翌年度の年金は1.1%減る。
マクロ経済スライドは04年の年金制度改革で導入した。15年度は消費増税の影響で物価が大幅に上昇しているので、現行制度のままでも年金は抑制される。ただ、将来デフレや物価上昇率が低くなった局面では給付を抑えられないので、今のうちに改革を急ぐ方針だ。
厚労省が3日に公表した公的年金の財政検証では、年金制度の危うい現状が明らかになった。女性の就労が進まないケースでは、約30年後の会社員世帯の年金水準は現役世代の手取り収入の50%を割り込み、現行制度が「100年安心」としていた前提が崩れる。
これから年金を毎年度削減するようになれば、現役世代が老後にもらう年金の水準は改革をしない場合よりは改善される。厚労省の試算では経済が低迷した場合でも、現役収入と比べた給付水準を最大5ポイント引き上げる効果があるという。
現役世代は04年の改革に沿って保険料率を毎年着実に引き上げられている。会社員が加入する厚生年金は17年に保険料率が18.3%(これを労使折半で負担)になるまで0.354%ずつ引き上げが続く。
改革は現役世代だけでなく、年金の受給者にも着実に負担を求めるのが狙いだが、高齢者の反発で法改正に向けた調整は難航する可能性もある。
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若い世代(男S36.4.2 女S41.4.2 以降)は、65歳年金支給です。
さらに、今後68歳や70歳支給も想定されております。
年金の世代間格差はすさまじいものがありますので、年金受給世代にも負担をもとめたいところなのでしょう。