【労働】介護職員うつ病深刻 厚労省

【労働】介護職員うつ病深刻 厚労省

2016.5.9
仕事のストレスが原因でうつ病などの精神疾患を発症したとして、労災を申請した介護職員が2014年度までの5年間で2倍以上に増えたことが7日分かった。認定された人も3倍に増加し、業種別の順位も上昇。慢性的な人手不足が続く介護業界の深刻な職場環境の悪化が浮き彫りになった。政府が1億総活躍プランで人材確保や処遇改善を掲げる中、メンタルヘルス(心の健康)対策の推進も求められそうだ。

厚生労働省の集計によると、介護を含む「社会保険・社会福祉・介護事業」の精神疾患の労災申請は、09年度の66人が14年度に業種別トップの140人に増加。この5年間の増加率は2・1倍で全業種の1・3倍を上回った。

労災認定も09年度の10人から14年度には32人に増え、全業種の認定数(14年度は497人)の増加率(2・1倍)を超えた。業種別の順位でも、14年度は運転手が多い「道路貨物運送業」(41人)に次ぐ2位で、09年度は5位。10年度(20人)に1位となって以降は1位か2位の状態が続き、「医療業」などと共に毎年上位を占めている。

個々の労災申請と認定の時期は年度がずれることがあり、15年度の認定はさらに増える可能性がある。腰痛対策などを中心にしてきた介護の労災問題は、対策の見直しが迫られそうだ

「社会保険・社会福祉・介護事業」には福祉施設などで働く人も含まれるが、厚労省によると多くは介護の労働者だとしている。09年度から現在の分類方法に変わったため08年度以前との比較はできない。

うつ病などの精神疾患の労災は、認定基準に基づいて仕事の負荷との因果関係を判断。長時間の残業や仕事内容・量の大きな変化、休日のない長期の連続勤務、パワハラやセクハラなどがあった場合にストレスの程度を評価し、強いストレスがあれば認定される。

厚労省は個別の認定事例を公表していないが、介護に関しても長時間の残業や不規則な交代制勤務などが認定の理由になったとみられる。

 

 ▼労務管理が不可欠 介護現場に詳しい聖隷クリストファー大大学院(社会福祉学)の古川和稔教授の話 介護職員のメンタルヘルスは、経営者が労務管理を適切に行っているかどうかに大きく左右される。勤務時間や休日取得の把握がずさんな事業所の離職率は高く、職員は人員不足の穴埋めをするため長時間働かされ、精神的不調に陥りやすくなる。労務管理を適切に実施している事業所は少なくなく、人材育成に力を入れれば定着率は高まる。高齢者の転倒事故の防止や質の高いケアにも力を入れることができ、入所者にもメリットになる。
■労働災害  労働者が仕事や通勤中の事故でけがをしたり、仕事に起因する病気になったりする災害。死亡も含む。本人や遺族が申請し労働基準監督署が審査する。仕事との間に因果関係が認められると、労災保険法に基づき、療養費用や休業補償、障害年金が給付される。死亡した場合は年金や葬祭料が支払われる。作業現場での転落といった事故のほか、過労死、過労自殺と呼ばれる脳・心臓疾患や精神疾患もある。化学物質などが原因の疾病も対象となる。 

※2016/5/8 共同通信

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社会保険労務士の腕の見せ所です(^^)!

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