【労働】「同一労働同一賃金」の3つの背景

【労働】「同一労働同一賃金」の3つの背景

同じ仕事に対して同じ賃金を支払う「同一労働同一賃金」を検討する自民党の作業チームは、正社員と非正規労働者の間の賃金格差をヨーロッパ並みの水準に改善することを目指すなどとした提言案を了承し、近く政府に提出することになりました。

それによりますと、非正規労働者の賃金について、日本は正社員の6割程度と格差が大きいことから、7割から9割程度となっているヨーロッパ並みの水準に改善することを目指すとしています。
また、非正規労働者に対する昇給制度の導入や、通勤手当など職務内容に関連しない一定の待遇は働き方によらず共通にすること、最低賃金の引き上げによる非正規労働者の処遇改善などを目指すことも盛り込んでいます。
作業チームは、この提言案を近く政府に提出することにしています。
「同一労働同一賃金」を巡っては、人件費の増加を懸念する声も企業経営者などにあり、政府は経済界や労働団体などからも意見を聞いて導入に必要な法案をまとめ、早ければ来年の通常国会にも提出したいとしています。
2016/4/16 NHKニュース
————————————————————————

<丸子警報器事件>
「同一労働同一賃金」の有名な判例としては、「丸子警報器事件」というものがあります。
この事件は、1993年10月20日、丸子警報器株式会社に勤務する女性臨時社員28名 が、同じ仕事に従事する正社員との賃金差別が不法行為に当たるとして、女性正社員との賃金 格差相当の損害賠償金と慰謝料の支払いを求めて提訴したものです。
非正規労働者に対する賃金格差の是正を、正面から問う初の訴訟として、注目を集めました。

<判決の要旨(上田地裁判決 東京高裁で和解)>

(1)臨時社員(パートタイム労働者)という雇用管理上の身分は、労基法3条にいう「社会的身分」には該当しないため、同条を根拠として差別是正を求めることはできない。
(2)よって、同一労働同一賃金の原則は、労働関係を規律する一般的な法規範とは認められないが、その基礎にある均等待遇の理念は、賃金格差の違法性判断において重要な判断要素として考慮される。
(3)業務内容、勤務時間及び日数等が正社員と同様と認められる臨時社員の賃金が、勤務年数の同じ正社員の8割以下であるときは、使用者に許された裁量を逸脱したものとして公序良俗違反となる。

 

<同一労働同一賃金が話題になってきた背景>
<背景①:非正規労働者の割合増加>
2016.4.9.2すでに非正規労働者の割合は、全体の約4割です。
以前は雇用の調整弁として臨時的役割でしたが、現在は一般的な雇用形態です。
またこのまま放置しますと、将来受け取る年金額は大幅に違ってくる上、次世代の教育格差にも影響を及ぼします。

 

 

<背景②:賃金格差が、諸外国と比較し大きい>
2016.4.9身分による賃金格差は、諸外国でもありますが、その割合が大きいです。

 

 

 

 

<背景③:世界的な潮流>
2016.3.30世界的に格差が広がりつつあり、それに伴うデモも多発しています。
そのことでアメリカでは、最低賃金上昇の傾向が見られます。
(※図は時給15$を求めるデモ)

 

 

<アジア諸国との人件費比較>
ちなみに、アジア諸国の賃金を比較してみますと、日本が突出しています。
世界と競争していくためには、この点も考慮する必要があります。
2016.4.9.3

« »